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世界最速のインディアン

映画好きに、この映画の評判がとても良かったので便乗DVD観賞しました。

 

当初、邦題の「世界最速の インディアン」を目にしたときは、オリンピック競技で金メダルを獲ったインディアンの話かと思っていました。

世界最速のインディアン号とでもすればよかったのではなかったでしょうか? (原題どおりですが。)

 

40年にわたりハンドメイドの改良を加え続けたモーターサイクル1920年型V.ツイン.インディアン・スカウトを駆り1000cc以下の流線型バイクスピード世界記録を叩き出した実在のバート・ムンローの物語です。実話を基にしたウソのようなホントウの話、いうなれば大人のファンタジーといったカテゴリーですね。

 

主演はサーの称号をもつあのアンソニー・ホプキンス。

ときおり"ハンニバル爺ちゃんの逆襲"という趣もあったりします?

彼だからこそ、この映画を最後まで観せられたという感じの好演だったと思います。

 

ストレート・ストーリーなどのロード・ムービーの定番且つ典型的パターンも踏襲されています。

できすぎた子供との微笑ましい交流、あるいは途中いろいろな人々との心温まる巡り会いなど、且つ釈迦の説法のようなご都合主義や脚本家の設定のような歯切れのいい台詞廻し(しかしながら、実際はバート・ムンロー自身の言葉の多くでもあるらしい)、ミエミエの盛り上げ演出等少々鼻につく場面も多いです。しかしながら、映画そのものの出来は良質と思えます。

 

特に中盤から、あらためてこの映画が事実を基に制作されているというのに、逆に驚かされてしまいます。

あの様なマシンで本当に320キロ以上もだせるのでしょうか? 

まさに命懸けの蛮行といえなくないと思えます。

あのスピードから(減速しているということでしょうが?)転倒してもあのくらいの怪我で済むのかなとも?

スタントも命懸けですよね。久々CG(実際はデジタル処理もあるようですが)じゃない本物の迫力というモノを感じました。

 

アメリカ・ユタ州のボンネビルその塩がおりなす大地は、万年雪が敷き詰められたようでもあり、どこか聖地といった風情を自ずと演出しています。

 

私個人として一番アメリカという国にいる人々の寛容もしくは自由尊重(当時1960年代と今では相違があるかもしれませんが)の精神に魅了されました。

規則は規則と参加をはねつけていた受付係員達が、バート・ムンローの一徹な情熱に根負けしてテスト・ランを許可するー。

はたまた、公道で警官が異常なバート・ムンローのスピード走行を許容し、さりげなく見逃ししてしまうー。

 

昨今の世の中では、そういった"人間らしい緩み撓みの部分"が欠落してしまい、夢では終わらなかった筈の"限りのない可能性"さえ没収してしまうという残念きわまりない愚かしい現実があるのでは?

 

困った時には、懇願して人の力を借りるという事も大切なことなのですね。そして、人と喜びを分かち合うということも....。

 

誰もが、飽くなきロマンを持ち続け屈することのない人間には手をさしのべる、さしのべざるを得ない。

社会とは、本来そうであらねばならない、いや、そうであるべき。

規則を曲げても優先すべきものは、この不完全な人間社会において存在すべき、存在して然りーそんな風に思わせてくれる。

 

個人的には、"5分間が一生にも勝る"という名言が強く心に響きました。

一見の価値アリの映画ながら、しかし少々オシッコ臭いのが気になる映画ではあります。(笑)

 

もし映画にちなんでインディアンの模型(もちろんゼッケン35の)が発売されたら、必ずや創ってしまうだろうと思います(>_<)。