下馬評があまり芳しくなかったので、期待度75%くらいで臨んだ本作でした。
が、正直いまひとついただけない映画でしたね。
全体を通じての高揚感のまったくない陳腐な仕上がりに、そしてシリーズの締めがこの出来ではガッカリでした。
再び、観客に説教を押しつける傲慢さにも...。過去のシリーズにさえ翳りを落としてしまいかねない残念さでした。
もし、サム・ライミ監督がこのシリーズにマンネリと長いシーズンに疲弊し、このような仕上がりに甘んじてしまったなら、3製作時当初より降板してバトンを他の監督に任せるべきだったのでは。例えばX-MENシリーズのように(成功かどうかは別にしても)。
特に、本作一番期待のヴェノムが、時に安っぽいメキシコの覆面プロレスラーのようにも見え、その登場からテンション一気に下がってしまいました。ブラックスパイダーマンとスレンダーなヴェノムの区別がつきにくかったのも難点だった気がしました。原作通りマッシッブなヴェノムの方が話の流れに整理がついてよかったと思います。ニュー・ゴブリンのコスチュームも、サバイバル・ゲーマー、さもなければ忍者もどきのようで工夫がなく安易でイケてないですね。
脚本の練り込み不足、唐突な編集にも呆れ全体を通して散漫な印象は拭えません。製作期間は十分とれたのではと思っていただけに納得ができません。
ベン叔父さんを殺害したのは、別人物といって前触れもなく、いきなり真犯人が出現するのがそもそも?マークです。
トビー・マグワイアのダンスなんか見てどうするのかとも聞きたいですね。!(間が繋げなくなってしまったので、いれておくかみたいなノリです。)
どこか同窓会じみてしまったシリーズ演技陣にも、緊張感の欠けが見れるような気もしてしまいました。
折角、新しく加わったキャラクター陣も人物像がろくすっぽ説明もなしで唐突に登場、観客置いてけぼりといった感じです。
本来ヴェノムとスパイダーマンとの高層ビル群の空中戦一騎打ちなど、このシリーズ一番のワクワクしそうな展開ができそうなものなのに、満たされない思いで一杯でした。スパイダーマン2のように昼間の格闘があってもよかったのでは、やたら画面が暗くわからない部分が多々あったのはストレスでした。
前半のニュー・ゴブリンとの摩天楼の格闘もゲーム画面のようで興醒めでしたし、時折、"指輪物語"を観ているような錯覚も起こしました。
サム・ライミ監督自身はヴェノムに人間性を投影できず、サンドマンの悲哀に焦点を当てたようですが、大多数のファンが望んでいたのはそうではなかったのでは?
観客サイドとしては、もっと3部作完結編だったのですから胸のすく思い切りスカッとするスペクタクル・シーンを存分に堪能したかったと思います。
前半は、いつものシリーズの延長を見守られた感がありましたが、とにかく中盤からまとまりの悪さが目立ちました。
観客は殊更、熱いドラマに酔いたのであって、最新CG技術に酔いたい訳ではないと思います。
もちろん高度なことはわかりますが、ハリー・ハウゼンの頃の特撮技術と根本的に映画全体の中でその意味合いが持つポジショニングはどれだけ違うのでしょうか?
多大な大金を投じたであろうCGも意味のないもの、場合によっては、シーンによってチープさを感じてしまうのは問題ですね。
どこか投げやりなところを見とれてしまうのですが、サンドマンの砂のCG効果は確かに凄いと素直に感心できる箇所もありますが、クライマックスは東宝の怪獣映画(それも出来の悪い類)と殆ど差が識別できませんでした。
実のところ、このシリーズ中一番の儲け役は、影の立役者ウィリアム・デフォーでしょう。
個人的には、これ以後のシリーズ続編は、サム・ライミ監督が続投すべきではないと思えます。
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2007年度作品 ★★ [最高は★五つ]
監督 SAM RAIMI 配給 COLUMBIA PICTURES