お帰り ! 「レッド」「ブルー」のゴールデン・コンビ!! いや、映画本編は「ゴールデン・アーミー」でしたね。
前作HELL BOYから4年余り、再び魔物たちとの新たな闘いが始まる...。
とはいえ、チョコレートパフェに、小倉餡がはいっているような、どこかシックリしない感覚の映画となりました。残念ながら、人類の危機感とか、前作HELL BOYの方がスケール感では勝っていましたね。話のまとまりやテーマの明確さは、こちらの方がシボれているとは思います。
最初、X-JAPANのYOSHIKIがメイク出演してるの? と、思わず勘違いしてしまった、なにかビジュアル系っぽいエルフ族のヌアダ王子...。ステージに上げてカラオケ歌わせたら、相当上手そうです。
しかしながら、この監督の武術に関しての造詣の深さには、いつも感心します。格闘アクションセンスは抜群ですね。前作のクロエネンのトンファーさばきに劣らず、瞬きせず視線釘付けされる程、スピード感・緊張感ある殺陣の振り付けはシビれる出来映えです。
コメディー・タッチで推移する前・中編は、人によりけりでしょうが、私的にはあまり入り込めないノリの少ないパートとなってしまいました。とはいえ、スターウォーズのような異種の怪物が、闊歩するトロールマーケットのシーンなど、それなりに豪奢で紛れもなく見せ所のひとつではあるでしょう。
流石に後編ラスト30分では、いかにもギレルモ・デルトーロ監督らしいキレのある演出が全開します。
やはり、全編を"ミミック""パンズ・ラビリンス"のようなシリアス・テンションでバシバシ押し切ってもらいたかったのが本音です。(しかし、あの内容でよくアカデミー賞を獲得できましたね。作品の格で考慮するなら、それも善しの選択と思えなくないのですが、アノ"どぎつさ"や"エグさ"が考え物でした。)
どこまでも大甘なHELL BOY ! しかし決して非情になどなりえない、センチメンタルな人間臭さこそが彼の魅力の本質ではあるでしょう。それは、赤ん坊を抱えながら自身不利を被っても、守るべき使命を全うしようとする怯むことなき意志の強さなどに顕著に見受けられます。
エイブが、途中で襟タイプ呼吸装置なしで、地上を歩いちゃってますけれど、説明シーンカットされているのでしょうか? たまらなく気になった不可解な部分でした。リズが前作では消極否定的ネクラ・キャラだったのが、今作では積極的参加型ハイテンション・キャラに大変身、それだけ母は強しというオチなのでしょうか。
ヨハン博士など特異なニューキャラが霞む程、エンジェル・オブ・デスが最後には美味しいところを、全部持ち去っていってしまった感がありますね。エンジェル・オブ・デスこそ何をするでもなかったですが、目立ち度では本編No.1だったでしょう。短すぎる出演シーンが惜しくてたまらないくらい魅力溢れる濃厚キャラでした。実際HELLBOY3が企画されようものなら、物語のつながりとして出演しそうな内容でしたしね。
ラストの結末は、逆もまた然りということで、すぐに察しがついてしまいました。エイブやリズの究極といえる選択は、いかにも世紀末的で救いのない現実社会を反映している感じで、ある意味悲壮ささえ漂います。
結局、肝心のゴールデン・アーミーに圧倒的な恐怖・驚異・威圧感を感じられなかったのが、何よりイタかったですね。ヘマするとブリキのオモチャのようなゴールデン・アーミーより、いっそのことヨハン博士が軍団になれば、より容易く世界を制圧できそうに見えてしまいましたし...。
それでも、三度(みたび)どこかでレッド&ブルーのコンビに会いたい気がするのは、私だけではないでしょう。十分、一見の価値ある仕上がりにはなっていると思います。
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2008年度作品 ★★★ [最高は★五つ]
監督 GUILLERMO DEL TORO 配給 UPJ