未来殺人罪という話も暗く、気が晴れない内容も重石でした。
根本的に最近流行の"トム・クルーズの為の映画"ですね。
ただ、彼の尋常でないダッシュ力にはほとほと感心しました。普段から相当数鍛えているなと。
コリン・ファレルの存在感はこの映画の収穫のひとつではあったかも知れません。
(この作品まで彼を知りませんでしたが、本作品では評判通り素直にイイなと思えました。)
プリコグの予言によって犯人、被害者の名が玉に刻まれて落ちてくる演出は果たしてイキでしょうか?
周りの装置設備と比較して、むしろ陳腐に思えてしょうがありませんでした。
あんなフザけた装置で有罪を押しつけられる事の方が本作よりも遙かに寒気を感じますね。
プリコグを人間と思ってはいけないという台詞で、STORYは崩壊から始まっている感じで正当なノリをもって映画が観れませんでした。
小道具としては、スパイダーがお気に入りでした。よくできていたと思います。無機的なモノを感情的にアニメートできた成功例のひとつでしょう。
ブレードランナーの大成功に対しスピルバーグ監督は嫉妬心があるのか、"現実味のない子供騙しなオモチャ的SF"が多いという様な発言で敵愾心を見せますが、必ずしもSFファンは科学考証を何より重視しているとも思えませんね。映画として面白いか? 否か?でしかありません。
その意味では、同時期に公開された同フィリップ K. ディック原作の映画CLONE(クローン)の方が地味ではありましたが、同じ様に主人公が濡れ衣?を着せられる展開にも関わらずSTORY的には、良くできていたと思いますしクライマックスにはハラハラドキドキさせられ、意外な結末に納得もできたりしました。(とってつけた様なSFシーンでしたが、CGを観る映画じゃないと思いますし。)
それに、ブレードランナーの公開は1982年ですからね。20年以上も前の映画に自分の方が優れているとムキになる行為自体、"惨め"です。
"秀才"が作る映画はこうだろうなと、理屈ばかりが際だっていて、個人的にはそうも面白いとは思えませんでした。
ジョーズでは、悪戯心ある演出が秀逸でその才能に疑いはありませんでしたけれども、最近では手を拡げすぎていて、どの作品にも完成度を感じ得ません。
もっと集中して只一遍を本気で創って欲しいのが本音です。
且つ彼の映画には幕の内弁当的パターンがあり、それが殆ど読めてしまえる程もはや目新しい工夫というものが存在し得ませんね。
とはいえ、未来設定考証の巧みさ+その努力にはやはり驚嘆すべきものもありその意味では★をひとつプラスと考慮いたします。(イケてない警察コスチュームとか、強引な辻褄合わせやウケ狙いミエミエの演出もあったりしウンザリ感も否定できませんが。)
ブレードランナーを観てフィリップ K. ディック原作の"アンドロイドは電気羊の夢を見るか?"をすぐさま買って読みましたが、この映画を観て原作を読みたいという欲求に駆られることは全くありませんでした。トム・クルーズ&スピルバーグ連合で挑んでも、昔のリドリー・スコット一人に敵わなかったという感じでした。
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2002年度作品 ★★★★ [最高は★五つ]
監督 STEVEN SPEILBERG 配給 20世紀FOX