言える文句がない ! この映画を抜いたと思えたSF映画は、今もって皆無です!
たぶん、それは、この映画がもしかしたら常にSF映画以上の存在だからなのかも知れないですね。
それを証明する様に、この映画に影響を受けたと見受けられる作品は、あらゆるジャンルを超えて山ほど存在します。
タイレルコーポレーションのミニチュア(といっても畳4畳くらいあったと記憶する。)を池袋の西武デパートで見たり、有楽町でシド・ミード展を見たり、はたまた偶然、銀座のヤマギワ楽器店の地下で画集クロノグラフの発売記念に来日していたシド・ミード本人を目前で見たりと、この映画に関わる思い出は不思議と多かった。
この映画そのものは、リアルタイムでは偶然にも雨の降っている日に見ました。(外は、土砂降り、館内は酸性雨状態 ! )
だから、映画館から退出した時は、陰鬱でしたね。
映画も、スピナーがあちこち飛び交うだけの変な映画というのが、率直な感想でした。でも、心には引っ掛かっていました。
後年、DVDであらためて最終版を観て、価値観が一気にGRADEUPしましたね。
ですから、DVDの最終版を対象とします。(この最終版のデキが一番と思えるからです。)
言わずと知れたルトガー・ハウアーの格好良さ!
まるで、シェークスピアの戯曲を観賞しているのではと場面錯覚するテーマの崇高さ!
一瞬、一枚の額縁ごと絵画を切り出した様な抜群のカメラトリミング!
画面中に存在する退廃的で独特な奥行きある空気感!
BANGELIS の未来感溢れる心地よいシンセサイザーMUSIC !
円熟期にはいっていたシドミードの素晴らしいコンセプトアート!
オープニングからロールエンディングまで、リドリースコット監督がもたらしたダレのない完璧といえそうな緊張感に満ちた映画のリズム!
個人的に一番好きなSCENEは、タイレル博士を殺害後、エレベーター内でのロイ・バティの心の葛藤を描いたSCENEですね。
冷血さに徹し得ず、苦悩を感じ後悔の念にさえ、さらされるレプリカントのある種、悲哀じみた切なさ、やるせなさ。
前のSCENEのセバスチャンの「見せてくれ ! 機能を !」とある意味侮蔑ともとれる問いかけに対しての「俺たちはコンピュータじゃない。 有機体なんだ !」という怒りも含めた彼らの主張を自ら体現してしまう感じで。
なぜ、ロイ・バティは、最後にデッカードをあえて見逃した上で、自らの生にピリオドをもたらしたのか?
その行動の意味は、観客それぞれが考えるべきなのでしょうね?
命の重みが軽い昨今には、生命の存続にことごとく執着するレプリカント達の渇望にこそ、その尊厳を感じる次第です。
LAST SCENEは、ORIGINALより、DIRECTORS CUTの方がいっそう印象意義深いですね。
著作権が分裂して、いろいろ難しくなっている様でありますが、このDVDのDTS版がでたら、本能的にきっと購入してしまうなぁ! (現行のDVDもドルビーにしては、感心する程いい録音ですが。)
この映画を観て、観た時間が惜しかったと感じた事は、今もってありません。それは、これからも変わらないでしょう!
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
1982年度作品 ★★★★★★ [最高は★五つ]
監督 RIDLEY SCOTT 配給 WARNER BROS.