それまでの大作路線からは外れ小振りな佳作感の強いALIEN3。
この映画を劇場で観た時には、騙され感が強くいささか憤慨した記憶が残っていたのも事実である。
しかし、後年TVやDVDで不思議と何度もきちんと観賞してしまう不思議な魅力の作品でもある。
シガニー・ウィーバーが脚本を了承し、出演に納得したという経緯もわかる気はするのである。
映画そのもは、なにか演劇を観させられている様な感はあるが、舞台が収監所という限定的な設定ゆえであろう。
映画そのものの完成度は悪くない。トーンは統制され、一貫したまとまりで最後までを仕上げているのは、監督の裁量であろう。
さすがは、DAVID FINCHERというべきか?
だが、まとまりの良い作品というものは、逆に言えば、破綻も少ないのを代償として個性的なキラメキがないのも事実だ。
その意味では、この映画も例外ではない。
私個人は、地味ではあるが幾つかのシーンでは美しく好きなシーンもあったりする。
この監督のシーンに対する美意識的な感覚は、非常にいいセンスが感じられる。
ただ、お化け屋敷的な追いかけっこが続く終盤間際は工夫が感じられないし(絵づくり的には、悪くない。)、1と2にあったスケール感の大きなドキドキハラハラ感には乏しい。
メガネをかけた黒人の囚人ディロン役のチャールズ・S・ダットンは、なかなか達者な演技力で、このドラマに厚みを加えるのに貢献していると思われる。
DOCTORクレメンス役のチャールズ・ダンスも、巧みな演技であり印象に根強く残る。
これらの脇役に挟まれ、演技力が重視されざるを得ない本編でのシガニー・ウィーバーは確実にやる気を出していたと思われる。役者としても個人としても逞しく成長している。
やはり、ALIENシリーズに出演したのは、監督にというより"時代"に選ばれた人だったのだろうという気になる。もはやいまさら、この人以外にリプリーを演じられる人は考えつかない。
もちろん、私はシガニー・ウィーバー演じるリプリー中尉の大フアンである。
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1992年度作品 ★★★ [最高は★五つ]
監督 DAVID FINCHER 配給 20世紀FOX